6人が本棚に入れています
本棚に追加
秀吉さんの発言に陽は、横を向き申し訳無さそうにしている。
…まさか、陽が織田信長の息子だったなんて…。
でも一つだけ疑問がある。
「…織田、信長って…誰?」
初対面の時から表情を全く崩さなかった秀吉さんが、驚愕の表情を浮かべる。
それは陽も例外でなく、心底驚いたような顔で私を見る。
「…この娘何者ですか…?まさか信長様知らないなんて…。」
「そういや教えたこと無かったな…。日本一有名な人物なんだが…。」
もしかして、陽が時々言ってた『あいつ』とか『あのゴミカス』の人が織田信長って人なのかな。
「信長様はですね、初めてこの国を統一した人です。言ってしまえばこの国の頂点ですよ。」
…あぁ、そういえば陽から『天下統一』を果たした家の話を聞いたっけ。
その頂点に立つ人が織田信長って人なのか。だから陽は詳しかったのか。
「…偉い人…なんだ。その息子さんが、陽…?」
「えぇ。信長様の四番目の息子が信蔵様になります。」
薄々感じてはいたが、陽はやっぱり武家の人だった。
あの綺麗な服は、当時着ていた物だったのだろう。
「…すまん、夏生。何も話してなくて…。」
「…??どうして、謝るの…?」
私にはどうして陽が謝るのか分からなかった。
陽は前に言っていた。話したくない、思い出したくない過去があるものだと。
私も、それが嫌というほど分かる。
「別に陽が誰の息子とか、関係無いの。私にとって、陽は陽なんだから…。」
思っていることを真摯に告げる。
今更陽がどんな人、どんな生まれだったとか私には知ったこっちゃない。
私は、純粋に陽の側にいたいだけだから。
過去がどうであれ、私は今の陽が大好きなのだから。
「…こんないいお嬢さん連れてるなど羨ましいこと限りないですよ、信蔵様。」
「…あぁ。俺も今初めて神に感謝してる。無信教なのに。」
天を仰いで、染々と語る陽の声はいつも通りに戻っていた。
「ありがとな、夏生…。」
「どういたし、まして…。」
笑顔でお礼なんて言われたら、自然と顔が赤くなってしまう。
陽の笑顔は反則級だと思いました。
最初のコメントを投稿しよう!