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「あんたが三原だと思ってた時、苦しくて仕方がなかった」
辻谷くんは、そっと俺の頬に手を添える。
「初めて会った時から…あの瞬間から、俺はあんたに捕まってる」
目から涙目が溢れ、頬を伝い落ちていく。
きっと…。
きっと、この思いは報われないと思っていた。
あの時の事は、気の迷いだったと言われるものだとばかり思っていた。
それなのに…。
みっともなくボロボロと泣く俺に、辻谷くんは少し苦笑して、そのまま俺を抱き締めた。
あぁ…と、思う。
ずっと忘れられなかった温もりが、今、こうしてここにある。
もう二度と、感じられないと思っていた。
一生、忘れられずに引き摺っていくのだと思っていた。
「俺、あんたが好きだ」
抱き締められたまま告げられ、嬉しさで涙が止まらない。
彼の背中に手を回し、ぎゅっと縋り付くようにして抱き締め返す。
「会った瞬間から、今まで、忘れた事なんてなかった」
「俺も…」
涙声になりながらも、必死に声を絞り出す。
「俺も、君が好きだ。ずっと……この三年間、忘れる事なんてなかった…忘れ…られなかった」
俺の言葉に応えるように、辻谷くんの腕に力がこもる。
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