格子の獣

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*格子の獣・1* 目が覚めると、そこは知らない場所だった…。 辺りは真っ暗で、何処かの建物の中だという事は分かるが、それ以外は何も分からない。 埃と、カビ臭い匂いが鼻腔を擽る。 うっすらと開けた目で、高い場所に格子付きの窓があるのを確認する。 その窓から、青白い月明かりが、儚げに中へと差し込んでいる。 身体を動かそうとして失敗した。 激痛が身体中を襲い、その痛みで息をする事さえ、一瞬忘れる。 そうして、俺は思い出した。 そう……。 これは、二度目の覚醒だという事を。 会社を出て、駐車場で誰かに声を掛けられた。 その次の瞬間には、意識を失っていたように思う。 なんと言っても、何も覚えていない……。 そうして、目が覚めた時は、何も見えなかった。 そう……。 言葉通り、何も見えなかった。 今、冷静に思い返せば、目隠しをされていたんだと思う。 その時は、そんな悠長な事を考える余裕なんて、少しもなかった。 そして、俺の傍には誰かが居た。 目隠しで見えなかったけど、すぐに分かった。 何故なら、俺はその男に、殴られ、蹴られていたからだ。 何度も、何度も、何度も何度も何度も……。
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