第1章

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【アレルギー科医の杞憂】   72番の方、診察室へどうぞー。 若い看護師の声で、アナウンスが流れた。   連日、午前中だけで70人を超える患者が押し寄せて来ている。   「どうされましたか?」 今日も患者は憔悴した母親に連れられた、幼い子供が多い。 最近、妙に自閉症スペクトラムの患者が多いと感じていた。   「蕁麻疹が…。アレルギーですかね?」 母親は、心配そうにそう訊ねる。   とりあえず、現在までの病歴や、食事の内容を確認する。 いつもの作業だ。 今回はPDD‐nos(特定不能の発達障害)のグレーだった。   「では、蕁麻疹が出る前に、予防接種を受けられているのですね?」 「はい、小児科さんで三種混合の追加接種を…。」 メチロサールか? 一瞬疑いが頭を過ぎる。 とりあえず、血液検査のため、採血をして、もうひとつ訊ねてみた。 「失礼ですが、PDD‐nosの疑いと診断されている、との事ですが、お子さんは、便秘か下痢をしていませんか?」 母親は不思議そうな顔をする。 まあ、そうだろう。 アレルギーの疑いで来院したのに、便通を聞かれるなんて、普通は無いだろう。 「は…はい。便秘ぎみですけど。」 ※メチロサール ワクチンに含まれる防腐剤(水銀) FDAが自閉症との因果関係を認め アメリカ、イタリアでの裁判で原告(被害者)側が勝訴した。
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