第1章

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【三上の理由】 日下と別れて、自分の診察室に戻ると、私は帰り支度を始めた。 「三上先生、お疲れ様です。」 カルテを整理している看護師に、手を振って挨拶する。 帰り道にある花屋に寄ると、少し大きめの花束を買った。 「奥様への贈り物ですか?」 「ああ、いや…。」 私は言葉を濁すと、早々に花屋を後にした。 妻…美咲は今、アメリカの病院にいる。 数年前、私が建て替えた家が原因で、重度のシックハウス症候群になったのだ。 私は、タクシーを拾うと、霊園の前で降りた。
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