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さて、問題は兄貴だ。あと二週間ほどで夏休みになる。
県外の大学にいる兄貴も、夏休みには帰ってくるだろう。
部屋を片付けさせた見返りはきっちりと貰わなければ…。
お金でいいかな。リアルマネーで…。
「ってか今日ほんと疲れた!!!」
将太は早くも眠くなってしまっていた。現在時刻は7時56分。
もうすぐ8時になる。あたりもすっかり真っ暗だ。
「仕方ない…今日は戻って寝よう。」
将太は家に戻ると決め、後ろを振り返った…。
目についたのは、歩道のゴミでも、電信柱でも、家々でも、
側溝でもない。
最初に目を奪われたのは、空だった。
なぜだかわからないが、すぐに感づいたのだ。自分の真上の
空は、何かが違う。
「…なんだあれ…。」
赤いのだ。本来真っ暗なはずの空。今日は雲一つなく、星が
綺麗に見えていたはずの空に、突如巨大な赤い雲が覆いかぶ
さった。
それも不自然なことに、将太の上空にだけ…。
「なんだ…何かがおかしいぞ…。」
その時だった。将太はその雲の中心から、何かが落ちてくる
ことに気付いた。
それは、目にも止まらぬスピードで、将太の目の前に落ちてきた。
将太は空から、それに目を移す。
「…え?」
刀…だった。赤と黒の柄に、銀色の刀身。鍔はやや赤みが勝った銀色。とても綺麗な刀だった。
「なんで…空から刀が?」
完全に動揺していた。しかし同時に、興奮していた。好奇心と
いうやつだ。疲れを忘れるほどの好奇心。
将太は、躊躇することなくその刀に近づいた。近くで見れば
見るほどわかる。その美しさが…。
「なんだよこの刀…かっこいいな…。」
将太は不意に手を伸ばし、刀に触れた。
その瞬間、将太は刀から出る赤い光に包まれた。光は夜道を
明るく照らす。
「はっ!?なに?」
将太を包んだその光は、やがて”炎”へと変わった。明らかに
将太の周辺だけが炎上している。
「うわあああ!死ぬ!死ぬからほんとに!」
しかし不思議なことに、その炎は熱くなかった。明らかに皮膚
に炎が接触しているが、熱さを全く感じなかった。
炎は渦上に形を変え、将太を包み、そして消えた…。
炎と将太と…あの刀は、その場から姿を消した…。
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