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暗い部屋の中、青白い画面に、彼の姿が浮かび上がる。
にこりと微笑む彼の顔が歪んだ。
「わるい。風呂、入ってたの?」
私に向けて放たれた台詞に、バスタオルの端を胸の前で巻きなおしていた手を止めて、しゃがみ込む。
画面から自分が消えたことを確認した。
「ご!ごめん!
慌てて出たから、なんか嫌なもの見えた?」
「いいや?
嫌なものは何一つ見てない」
「そっか」
ほっと息を吐いて、
しっかりと巻きつけたバスタオルの裾を直しながら、
PCと対面する椅子へと腰掛けた。
「目の保養はばっちりさせてもらったけどね」
クスリと、悪戯っぽく笑う彼が、ひっそりと囁く。
「....うわ...最悪」
髪の束を裸の肩に流しながら頬を膨らませた私に、
「お帰り」と彼は言う。
その言葉がくすぐったくて、
「...ただいま」というまでに、少し時間が掛かった。
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