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唖然としている梅の手を引き倉竹は店の入口へと進み出た。入口に扉は無いのに、そこから先は真暗で何も見えない。トラップは発動しない。全て制御下にあるようだ。
「ストップ」
「え」
店の中に入ろうとしない倉竹。言われるがまま梅も止まった。
倉竹は懐から一枚のお金を取り出し店の中に放る。床に硬貨のはねる音が、しなかった。
「…………」
倉竹は黙って太陽の位置を確認。
つられるように梅も確認する。梅の測りで3分程経過したと思った途端、
「よし。入るよ」
「にゃっ」
再び腕を引かれた。
何がなんだかさっぱり判らない梅。目を白黒させつつ、真暗だったはずの店内に足を踏み入れると、そこは明るかった。
「……え?………ええ!?」
「今日和」
「っせーなァ……。遅ェよバイト。減給すっぞ」
「わ……ひゃあ…?」
そして瞬きの合間に現れたとしか言いようの無いタイミングでいつの間にか視界に入っている人間(人間なのかな?と梅は一瞬思った)が、居た。
「――――あ?んだこの……犬?かァ?」
耳は布で隠しているはずなのに、その人物は訊いてくる。
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