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それは確かに犬だった。怪我を、している。死んではいないが意識は全くなかった。
「何。お前。いじめられた?」
のんびりとそう言って、男は懐から『バッチリお任せ☆救護セッツ(複数形)』を取り出し犬の傷にテキパキと処置をする。終わるとそそくさと仕舞い、
「まあ…そんな感じで。達者でな」
ひらひらと手を振って男は立ち上が…ろうとした。
「……まって」
男、一瞬硬直。左右を見る。普通に川岸だった。
「えっと」
「まって。まって」
「えーっと。むしろ俺が待って」
視線を、下へ。
バッチリ目が合った。なんかウインクされた。
「有難う!優しいヒトなんだね…素敵」
心なしかほっぺた(の位置ではないかと予測されるところ)が赤いようだ。
尻尾がパタパタと振られている。
わーかわいい。
違う。
「えーーっと。えっと。……うわわわわわ」
無意味に九字を切る男。
「あははは!そんなことしてもわたし妖怪じゃないからつかまえられませんよ!ユーモアのセンスもあるのか…素敵」
むしろお前が妖怪だろぉぉぉおおおお!!!!??
男の叫びは音にならなかった。
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