まぼろし

そのよん

「世も末だねぇ…」
「………あ、さっきの…？」
「うん。お団子屋さんが一軒もない」
「甘党っ」
「ナイス梅。日々ツッコミの腕を上げてるなあ」
「ホントですか!?えへへへー」
頭なでなでされて嬉しい梅。恍惚の表情を浮かべている。
「お団子屋さんどころか活気もない、か……。うむ、世も末」
「よもすー」
「よもずー」
「あ！御主人様！よもぎ餅が食べたいです！」
「ああぁぁぁぁ…食べたい…。素手で食べたい……うぉー!!」
崩壊バージョン倉竹、再来だった。
こりゃいかんと梅が他のネタを探して周囲に視線を走らせると、
「おややん？」
「んにー？」
「御主人様御主人様、さっきの人です。あそこ」
「…………おー本当だ。どっしたかな。依頼かな。めんどくさいな」
「本音出たぁぁ！」
御主人様、梅は御主人様のそんなトコも好きです。
と梅が愛を再確認しているとはこれっぽっちも知らない倉竹はさっきの人…お雪に向かって手を振った。
「やほー。尾行ー？」
「……うるさいっ！」
元気にわめき返すお雪。