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お雪の両親は暗殺業を営んでいた。暗殺業、などというものは何時殺されても文句の言えない職業であるし、暗殺という最終手段に出るからにはその人物、その人物の周りには社会の闇の部分が付き纏うから殺されやすい職業でもある。
案の定何かに触れてしまったのか、少し深く入り過ぎたのか、彼らはあっさりと殺された。
お雪は両親から生前その職業について聞かされてはいなかったが、それなりに薄々勘付いていないこともなかった。しかしお雪に何か厄災が降りかかることなど無く、両親も優しかった―――幸せ、であると言えるのだろう。だからこそもしもの時が来ることは分かっていて、実際両親『急死』の知らせを聞いても驚きこそすれ、取り乱し泣き叫ぶことはなかった。ただ少し、何か一生大切なモノを失った、ような、気がしただけで。
「……それなのに、あいつら言うんだ。"出せ"って」
「出せ…?」
お雪の身に覚えは無い。だが両親は何かを隠していた。隠したまま死んだ。だからそれを欲する奴らは、両親の忘れ形見であるお雪があやしいと踏んで今、追っている、ということらしい。
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