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「え」
「いきますよーっ」
どろんっ!!
何そのベタな効果音…とかツッコむ間もなく男は眼と口を極限まで開くことになった。
「………な……」
現れたのは少女と女性の中間程の歳に見える女。長いふわふわの薄い栗毛の間からのぞく同色の、犬の、耳。ご丁寧に尻尾も生えていた。元気に振られて、…。
「信じていただけました!?御主人……様…!?なんで逃げるの!?」
「―――――っ」
ひとまずは男の心の絶叫を聞いてあげてほしい。
何故に裸なんだぁぁあぁあああっ!!!!
*
「御主人様ぁ……」
くうん…。
犬の姿に戻った少女は耳と尻尾をぺたりと伏せ、うずくまっている男にその鼻先をこすりつけていた。
男はうう、と呻くと彼にしては低い声で発音する。
「大体、なんで御主人様…?俺お前の主人になった覚えないから」
「ええっそうなんですか!?」
「えええええー。むしろえええええー」
男はぐったりした。
「………」
少女は数秒思考。そして、
べろり。
「ふぁぁッ!?……なっなめ…っうわああぞくぞくするぅぅぅ」
電光石火の勢いで身を起こし男は耳をそでで拭く。それを見て少女は満足そうに笑んだ。
「やっと起きてくれました」
「何なんだぁぁ望みはなんだぁぁ!」
半ば自暴自棄になりつつ叫ぶ。
「……望み」
それまで一定以上のテンションを保っていた少女が、そこで初めてトーンを落とした。無表情に(犬だから表情なんて確信できないが)なる。
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