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『…こうして、ペルセウスは無事にメデューサを倒し、帰る途中に捕らわれていたアンドロメダを救い出し、幸せに暮らしましたとさ。ーおしまい』
真白い艶やかな髪を後ろで1つに束ねた美しい女性が語り終える。
この女性は紛れもなく、僕の母である。
母は暫くその本を見つめた後、その大きな腹を愛しそうに撫でた。
これは僕だ。母にそっと創り出され、母の腹に宿り少しずつ地上へ這い出る準備をしてた頃。
そう、これは記憶。僕の母の記憶。
ちゃんと愛する人を見つけたという記憶。
愛する人を見つけたのに一人で子を創った記憶。
自分の血が流れる痛みに耐え、僕を創った記憶。
僕を愛し、僕が愛せる人を探せますようにという願い。
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