エピローグ

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 少女は、服の端を掴んだ。頭の中の整理がつかない。彼女は何者なのか、そして何よりも、目の前に突然流れ着いた藁にすがるか、否か。もししがみついたなら、自分は自分でなくなる。子猫は子猫でなくなる。おそらく記憶も捨てることになる。それでいいのか。心の中でもう一度人生を歩みたい自分と、自分のまま死にたい自分がいた。少女は初めて無意識のうちに葛藤していた。  そっと猫を抱く。本来ならば甘い声でなくはずの猫、だが今回ばかりは違った。ただ、少女だけをまじまじと見つめていた。何かを訴えるようなそんな目で。そしてそれが、少女を揺り動かした。   「決まりました」    女性は、その決意に満ちた目を見て、悟ったのだろう。するかしないかすらを問わなかった。    「それでは、楽しんでください。あなたたちの第二の人生を」    そして再び二人は光に包まれた。それが実に滑稽なそれでいて過酷な喜劇の始まりとも知らずに。
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