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「それより、もってきてくれた?」
考えをめぐらせていると突然、朔埜から声をかけられた
「…あぁ、依頼されれば入手する
それが私の仕事だからな」
そういってアルベールはアタッシュケースからひとつの小さな実を取り出した
「しかし、こんなものどうするつもりだ?
貴様が興味を持つものか?
子供のおもちゃだぞ?」
そういってアルベールが取り出したのは、魔族の子供の間で大人気の”意思の実”であった
人形など無機物に一時的に命を吹き込む実である
「客が買うものに詮索はタブーじゃないの?」
失言とアルベールは口をつむぐ
「あはは、そんなに警戒しないでよ
ボクはあの二人ほど短気じゃないよ?」
朔埜はアルベールから受け取った実を手にとって見つめる
「どうするか…
ねぇ、この場所って凄い余韻だよね?」
アルベールは辺りを見渡す
確かにハザードと荊、さらには天駆ノ雷の魔力が残っている
強大すぎる力がすぐに消えることはない
放射能と同じである
「まさか…」
アルベールはあまり想像したくない未来を想像してしまった
「あの三人の魔力に意思を与えてみようかとね…
まぁついでにボクのも加えて
埋めちゃおうか…っと思ってね」
ウインクしながら言うことではないとアルベールは思う
「だが何に意思を吹き込むのだ?」
「そうだね~…
人形とかじゃ面白くないからさ
この大地にしようか?」
馬鹿げている
だが魔王と称される朔埜なら不可能ではないと思わされてしまう
「媒体がでかいからさー
目覚めるのは10年後か100年後か…はたまた1000年後か…
のんびり楽しむにはいい感じでしょ?」
「貴様らの寿命はどうなっているのだ…」
朔埜の言葉にスケールの違いを感じつつ、アルベールは溜息をつく
「さて…どういう形で目覚めるかな~…」
そういって朔埜もその場から霧のように姿を消した
残されたアルベールはただ一人いつの間にか茜色になっている空を見つめていた
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