第1章

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ハァ……ハァ…… 後ろを確認する余裕なんてない… ヤバい… こいつ、思っていた以上に素早い!! 段々と強くなるヤツの殺気をヒシヒシと感じながら 玄野は全速力で住宅街を走り抜けると T字路を曲がるために地面を踏みしめる。 反動でコンクリートが抉れその破片が飛び散る中で カーブミラーに写し出された姿が目に入り 「クッ……ォラァァ!!」 それを確認すると同時に 瞬時に力の向きを変え勢いに乗せた回し蹴りを繰り出した。 強烈な蹴りの威力に自らのスピードも上乗せされ ネギ星人は地面と垂直に吹き飛び民家の塀へと激突する。 「ハァッ…ハァッ……」 腕に抱かれた岸本は状況を理解できず 自分の身に受けた殺気の恐怖のあまり言葉を無くし身を震わせていた。 「少しの間ここに隠れていてくれ」 玄野は彼女を民家の生垣の間へと降ろすと 崩れ落ちた塀の方へと向き直る。 「あ……」 華奢な手が黒い生地に覆われた指先を掴んだ。 「いっ…行かないで……」 必死に絞り出した小さな声は なんとか力を込めて離すまいとするその手と同様に小刻みに震えていた。 玄野はその手を優しく包み込む様にして握ると 「大丈夫 俺がなんとかして 家まで送り返してやるよ」 潤んだ瞳で見上げる彼女にそう口にする。 無意識に口から出たそれは、過去に言った台詞と同じものだった。
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