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『 6月14日
雄太は今日から自然学校
加奈が少し寂しがっていた
出がけ際に声を掛けるけれど
返事をもらえないことは、やっぱり少し寂しい
一週間後に元気に帰って来たら
土産話を聞かせてくれるだろうか 』
「………………」
その文を何度も目で追う度に
言いようのない思いが胸に迫る。
当時小さな反抗期で、
煩わしくて口をきかなかった事を
今更責めても仕方がないのに
「お兄ちゃんー!
そっちはどう?
終わったらこっちも手伝ってー」
「……あぁ、」
襖の向こうの加奈に適当に返事をして
目を落とした時、
急に視界が揺れて激しい痛みが頭を駆けた。
「―――――――――――」
―――この感覚
もう久しくこんな事はなかったのに
滑り落ちたノートが床で音を立て、
足元がぐらついて意識が遠のいていく
「――――ッ」
どさりと膝をついた瞬間、
かろうじて保っていた意識がそこで途切れた。
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