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「お兄ちゃん
―――お兄ちゃん!」
ぐらぐらと体が揺れる
この声…、
俺を揺さぶっているのは…加奈か
「大丈夫、
こっち終わったら手伝うから…」
言いながら
その手を退けようとした時、
「なに寝ぼけてるのー
起きないと集合時間に間に合わないよ!」
「……え?」
ふっと目を開くと
見慣れた天井がぼやけた視界に映る。
そのまま視線を隣に移した瞬間、
心臓が大きく鳴り始めた。
俺を見下ろすのは『今』の加奈じゃない
もっとずっと幼くて
…そう、遠い記憶の中のものだった
(―――――――――――)
―――鼓動が逸る
それを悟られないように
出来るだけゆっくり枕から頭を上げると、
「……判った、
着替えたらすぐに行くから」
「もう7時だよ、急いでね!」
念を押しつつ立ち上がった加奈は
パタパタと襖の向こうへと消えて行った。
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