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湿気を帯びた風が頬を撫で、
古びた畳の匂いが鼻を掠める
焦点の定まらないまま目を開けると、
ぼやけた視界に映るのは乱雑に並ぶ段ボール
(――――――――――――)
時折強く吹く風が
網戸越しに細かな雨を中へと運ぶ中、
鈍く痛む頭を押さえて身を起こすと
つま先に何かが当たった。
目を落とした先にあるのは
ページが折れてしまった小さなノートで、
拾い上げたそれを強く握りしめる。
――――変えたかった
”変わらない”って判ってたし
”変えられない”って知ってた
だけどあの日から続く未来…
”今”を変えたかった
言いようのない寂寥感が包む中、
僕… いや、”俺”は
折れたページを戻して初めからゆっくりと繰り始める。
あの頃の『日常』が少しずつ移ろいで
そしてこの先が… 最後のページ
そのページを開いた瞬間、大きく目が見開いた。
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