8人が本棚に入れています
本棚に追加
あっという間だった。
襲いかかってきた男二人を一発で地に伏せて。
汐見を掴んでいた男も難なく引き剥がし。
それでも向かってくる男の顔面をがしり、と掴むとそのまま男の体を浮かしてしまった。
「あ、あがっ……」
「他の2人みたいに倒れてりゃいいのに。向かってきたっつーことはやられたいんだろ?」
みしみしと男の骨が軋む。
「おい、航矢!」
名を呼ぶも、耳には入っていないようだ。
汐見はこのままではいけない、と思い、航矢の腕に触れた。
「と、とがさん! もう止めてください!」
「お前、コイツにヤられそうになってたんだぞ。しかも殴られてる。コイツを庇う理由なんてねーだろ」
「私ならもう大丈夫ですからっ! まだ、やるというなら、あの、その、」
「ん?」
「わ、私に! 痛いことしてください! イイコトしてください!」
ぴしり。
航矢は硬直する。それは離れた場所から見ていた友人、千冬も同様だった。
ぼとり、と男が地に落ちる。
「……何て?」
「私にイイコトしてください!」
聞き間違いじゃなかった。
最初のコメントを投稿しよう!