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一度状況を整理しよう。な、うん。そうしよう。
少し離れた場所で硬直してしまった友人にそう言って、千冬は少し記憶を遡る。
そう、なんてことはない。可愛い女の子が、男に襲われていたわけだ。そしてそれを航矢、千冬が見過ごすことはせず、喧嘩の強い航矢を出動させたのである。
そして、明らかに乗ってきてやりすぎかねない航矢をどげんかせんといかんとか考えていたら女の子が止めに入った。
ここまではOK。少女漫画とかじゃわりかし見かけるシチュエーションです。
だがしかし。この後の、少女の一言。
「私にイイコトしてください!」
うん、わからん!
「え、えっと? 悪いんだけど、言ってる意味、が」
途切れながら千冬が問いかけてみれば、少女は不思議そうにこてんと首を傾げた。これだけ見ればただ可愛いだけの女の子なんだけどもなあ、と千冬は小さく苦笑する。
「殴るならどうぞ私を殴ってくださいまし!」
いやまあ可愛いだけじゃねえよなこんな台詞!
そんなキラキラしないで欲しいんですけど!
「……気持ち悪いんですけど」
ドン引きした表情で航矢が一言。
おや航矢が敬語とは珍しい。そんなことを思うのも束の間少女は頬を染めて「ありがとうございます!」と言っている。
千冬はかける言葉も見つけられずに立ち竦んだ。
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