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「ああもう、本当に戸賀さんは素敵な方! その何もかもを見下したような瞳に冷たく突き放すような言葉、そしてその猛々しい腕っぷし! 私、ずっとずっと思っていたんです! その瞳で蔑んで欲しい! その言葉で罵倒して欲しい! その力で痛め付けて欲しいって!!」
両手を組んで、キラキラと瞳を輝かせる汐見。見てくれだけなら、ただの可愛らしい美少女だ。
しかし、紡がれる言葉は、到底航矢には理解し難いもので。
固まってしまった航矢を見かねて、千冬が恐る恐る口を開く。
「えっとー、つまり? キミは、なんていうか、そーゆう、性癖……つーの? あー……」
「はい!まごうことなき、マゾヒストでございます!」
にこやかに言い放った汐見に、千冬はそれ以上何も言えなかった。
(そんな笑顔で言うことじゃねえから!!)
心中でだけ、高らかに叫んだ。
「っと。喜んでばかりもいられません。確かに私はマゾヒストですが、あんな男の人に犯されてしまうのは心底、嫌です。だから、本当に助かりました。戸賀さん、ありがとうございます」
「……別に、」
「さしあたっては、お礼をさせて頂きたいのですが、何か……」
そう言いかけた汐見に、航矢は「いらねえ」と冷たく呟く。
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