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そんな航矢に、汐見はほんのりと顔を赤らめながら控えめに詰め寄る。
「な、何でもいいんです。何か、お礼を」
「いらねえっつってんだろ。俺が勝手にやったことだ」
「それで私は助かった訳ですし、あの、お礼に……」
いつもなら。助けられた少女達は、『お茶でも、』と誘いに来る。まあそれすら断る航矢だ。
そして少女は泣く。そんないつもと同じパターン――
「私を殴っていただいても構いませんよ! ストレスの捌け口に、是非!」
「是非じゃねーよ!! つーかそれじゃ俺が助けた意味がねえだろ!!」
「戸賀さんが殴るから意味があるのです!」
「知らねえよ気持ち悪い!」
うん、そんなわけなかった!
そうだったこの子普通じゃなかった!
千冬は心中で突っ込んでから、わちゃわちゃと話す2人に歩み寄る。
……あの航矢が、女子と会話している。すげえな! いつもばっさり切り捨てるのに。いや、今も切り捨ててはいるか。あの子がもろともしてないからな……。
汐見は、航矢にどんなに冷たくあしらわれようと、どんなに突っぱねられようと気にしない。気にしない……というよりも悦に入った顔をする。
すげえな……本当。
「まあまあお二人さん。ここでずっとこんなんしてるよかさ。何か食いに行こうぜ」
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