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精悍な顔付き。
細いながらもしっかりと引き締まった身体はすらりと高い。
その男の名は、戸賀航矢(とが・こうや)。高校では皇帝(エンペラー)と呼ばれている。聞いた者は馬鹿馬鹿しい、と鼻で笑う者が大半だが、それは航矢を見るまで。一目見れば皆、納得してしまうのだ。
有無を言わせない威圧感。漂う貫禄。それが、航矢が皇帝と呼ばれる由縁だった。
「あ、あの。戸賀、さん……」
そんな航矢は、よくモテる。当然と言えば、当然だが、航矢は微塵の興味もない。大体は手酷く振り、泣かせた女は数知れず。
それでも、航矢の人気は途絶えることはない。
「何」
「わ、わたし、戸賀さんを一目見た時から、惹かれてしまいました」
小さいな。
一回り小さな頭を眺めがながらふと思った。
背中まで伸びた、絹のような黒髪。
ぱっちりとした目に、ふっくらとした艶のある唇。
緊張しているのか、胸の前できゅう、と両手を握っている。
「興味ねえ。つーか俺、お前のこと知らねーし。よく告白する気になったな。名前も知らない女と付き合うわけねーだろ。バカじゃねーの」
そう冷たく言い放つ。大抵の女は、ぼろぼろと大粒の涙を流し悲観する。そういう所も面倒だ。
「……ありがとうございます……」
ん?
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