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「あっシオ!」
友人がこちらに向かって手を振っている。
それに答えるように緩く手を振り返した。
「待っててくれたんですか? 千那ちゃん」
当たり前でしょ、と笑うのは高校で出会った友人である高村千那(たかむら・ちな)。快活明朗な美少女で、長い茶髪を1つにくくっている。
「当たり前じゃん! で、どうだったの」
「フラれましたよ。えへへ」
へら、と笑う汐見。
航矢の冷たい声、言葉、視線を思い出して、胸が小さく疼く。
「……無理して笑わなくていいよ」
「えっ? あ、うん、ショックです」
は、と慌てて言う汐見を、千那はぎゅ、と抱き締める。
「シオ。今日は忘れよ。パーッと遊んでさ」
「そ、そうですね」
ぽんぽん、と千那の背中を叩きながら、汐見はひっそりと息を吐く。
(い、言えない)
こんなに親身にしてくれる千那に。
(ちょっぴり興奮したなんて)
汐見は、マゾスティック、もとい、マゾ、もとい、ドMだった。
(ああ……思い出すだけできゅんきゅんしちゃいます。あの冷たい声、言葉、そして蔑むような視線。本当に私って変態ですね、あわよくば痛めつけて欲しいです)
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