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「な、何ですか」
「何ですかだってよ! まじウケるわ!」
ゲラゲラと下品な笑いを飛ばす男。
汐見は振り払おうとするも男の腕はびくともしない。
「決まってんだろォ? イイコトするんだよ」
ニタ、と笑みを浮かべる。汐見は吐き気を感じ、ぎり、と歯噛みした。周りを見渡すが、皆素知らぬ顔で通り過ぎていく。関わりたくないのだろう。
逃げなくては、そう思い、自由な足で、男を蹴り上げる。
「いってえ!」
「っ、」
緩んだ腕を振り払い走り出す。
「このアマ!」
「あっ!」
しかしすぐに掴まり、乱暴に引き寄せられる。
「なめたことしてんじゃねーよ!」
「う!」
ばしっ、と頬を打たれる。
「おいおい、顔はやめとけよー。せっかく可愛いんだからよ」
ニヤニヤと笑う男に、汐見はぐっ、と唇を噛んだ。
(い、痛い)
打たれた頬が、痛い。
強く掴まれた腕が、痛い。
痛い。痛い。痛い。
(だ、だめですって。こんな時に)
じんわりと、侵食していく、甘い痛み。
このまま、どうされるのだろうか。
正直、犯されるのは死んでも嫌だが、一番可能性があるのはそれだろう。
(ああ、もう、ダメなのでしょうか……助けなんて、来るはずも、ないし)
諦念が広がっていく。
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