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そんな時だった。
「おい」
第三者の声が響く。
一斉に視線はそちらへと向けられ、汐見もつられるように顔を上げた。
そして、どくん、と胸が脈打つのを感じる。
そこには。
とても冷たい目をしていて。
眉間に皺を寄せて。
全身から、威圧感を漂わせた、皇帝と呼ばれた男が、経っていたから。
「と、とが、ひゃん?」
呂律の回らない口で名を呼ぶと。
航矢はゆっくりと歩み出す。
「俺の、視界でよぉ」
こつり。
「1人の女を男3人で寄ってたかって」
こつり。
「しかも殴る、とか」
こつり。
「胸糞悪ぃこと、してんじゃねえよ」
こつり。
「死ぬ覚悟は、出来てんだろうな」
こつり。
言葉一つ一つが、地を這うように低く冷たい。
一歩ずつ近付く度に、怒りが手に取るようにわかる。
男達を悪寒が襲う。
汐見も、ぞくりと背筋を走るのを感じた。
(う、わあ、何て素敵なのでしょうか。私を蔑んでくださらないでしょうか。私に、あの視線を。あの言葉を。私に、
イイコトしてくれたら、いいのに!)
「航矢! 程々にな!」
少し離れた場所から、そんな声が飛んだ。
「さあ。保証はできねえな」
にやりと、邪悪な笑みを浮かべる航矢。
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