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今日から夏休み、それはつまり、思う存分に青春を謳歌する最大のチャンスが到来した事を告げる。
少年ーー神代零(かみしろれい)はこの夏休みを利用して、まさに思う存分に青春を謳歌しようとしていた。
零にとっては高校最後の夏休み。
それ故に、零が今回の夏休みに懸ける思いも半端なものでは無かった。
現在、零はとある場所に向かって全力疾走している。
そのせいもあり、零の清潔に整えられている黒髪は汗ばみ、男とも女ともとれる中性的な顔も自然と汗ばむ。
炎天下の中、全力疾走していればこうなるのも無理は無いであろう。
やがて、零は目当ての場所へとたどり着いた。
息を大きく乱しながら、零は目の前にある店の扉を開けた。
直後、この炎天下からしてみればまさに天国といった冷たい空気が、零の体に触れた。
「ああ、生き返る!」
思わず感嘆を漏らす零。
そして、店内へ足を踏み入れるや否や、零は店の扉を閉めた。
直後、零の耳にある者の声が聞こえてきた。
「ようこそ、神代君。いやあ、それにしても今日も暑いねえ」
零はすぐさま、声が聞こえてきた方へと視線を向ける。
すると、そこにはまさにピエロと言わんばかりの格好をした者がいた。
彼は人間では無い。
そう、彼は簡単に言ってしまえば、ゲームや漫画などではお馴染みのモンスターと呼ばれる者なのだ。
信じられない事かもしれないが、それはまごうことなき事実なのである。
だが、決して悪いモンスターではない。
むしろ、零からしてみれば、彼は自身の退屈な日常を大きく変えてくれた恩人のような存在なのである。
彼と出会わなければ、零は退屈な日々をただただ過ごし、思う存分に青春を謳歌することなど出来なかったであろう。
それだけ、彼が零に与えた影響は大きいものなのである。
「神代君、今日も行くかい? 思う存分に青春を謳歌することが出来る世界へ」
「もちろん、そうするために俺は今日ここに来たんだ」
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