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7月16日。
この日、気付けば俺は幽霊と呼ばれるものになっていた。
昨日17歳になったところだ。
名前は橘 優。
後覚えてるのは家の場所ぐらいのもんだ。
全く…夢も希望もあったもんじゃねー。何せ俺は死んでるんだからな。
俺自身未練なんてものが無いんだが、まだ成仏せずにいるって事は何か未練があるんだろうな。
記憶を失う前の俺。つまり生きてる時の俺は、今の俺からすれば別人だという感覚しかない。
何が俺をこの世界に縛り付けているんだろうか。
この世界は俺にとっちゃ何も無い。そりゃそうだろう。記憶が無いんだからな。
ちなみに幽霊と言っても足が無いわけじゃ無い。生きてる時と何も変わらず歩ける。ただ違う事は他の人間には俺が見えない事。俺の声も届かない事。
それに何も触れない。何かに触れようと手を伸ばしてみても、俺の手はそれをすり抜けていく。
俺はこの世界で1人なんだ。誰からも見られる事も無く、話し掛けられる事も無い。
でもそれで良いのかも知れない。
人に見られちゃダメなんだ。声を聞かれちゃダメなんだ。
そう、俺は幽霊なんだから。
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