7月16日

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分からない事が多すぎる。 いや、多すぎるわけでは無い。分からない事しか無いんだ。 1度家に帰る事にした。何か思い出せるかもしれない。 家の前に立つと、見慣れた感覚を覚える。勿論記憶には無いのだが。 表札には橘と書かれている。俺の苗字だ。間違いなくここは俺の家なのだろう。 中に入ろうと玄関のドアノブに手を掛ける。が、やはり触れる事は出来ない。 なら通り抜ける事は出来るのでは無いか? そう思い、扉に手から徐々に入っていく。肩まで入った時に一思いに目を瞑りながら頭を突っ込んでみる。 何かに当たったような感覚は無く、体は進んでいく。 目を開けると扉は後ろにあった。今は玄関の中で立っている。 どうやら無事に入れたようだ。 家の中を歩いてみるが、誰も居ない。 どこが俺の部屋だったのかもわからない。 しばらく玄関で立っていると、不意に扉が音を立てる。鍵を開けた音らしい。 次に扉が開かれる。入って来たのは少し年をとった感じの女性だ。 彼女も俺の記憶には無い。誰かは分からないが、この家の住人であるのは確かだろう。 ということは年齢から考えると、恐らくは俺の母親なのだろう。覚えてはいないのだが。 彼女について行くと、リビングに出た。 テーブルの前に置かれたソファに腰掛ける。 「なんでこんな事になったのよ…!」 そう言って彼女は崩れ落ちる。 「どうした?何があったんだ?」 声をかけてみるが、勿論反応は返って来ない。俺の声が届いてないんだ。 それから暫く彼女はその体勢のまま肩を震わせていた。 触れる事も、声を掛ける事も出来ずに、ただそばで立ち尽くすことしか出来なかった。 今の俺は彼女に何もしてやれない。ただ見ている事しか… 不意に彼女は立ち上がり、涙を拭う。 「そろそろ美咲が帰ってくるわね」 そう言ってリビングから出て行った。 彼女の様子からしてこの家に何かがあったのは分かったが何があったのかは分からない。 それから1時間程が過ぎた頃再び扉が開く音が聞こえた。 そして1度リビングに顏を出してからすぐに出ていった。 俺と年が変わらない程の女の子だった。 この子も勿論俺の記憶には無い。 誰なのか全く分からない。 俺は女の子を追いかけてみることにした。 女の子が向かったのは台所だ。 そこには先程の彼女が料理をしていた。
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