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「お疲れ様! 今終わったよ、これから帰ります 今夜もし早く帰れるようなら少しでいいから顔見に行ってもいい? 夕飯のお誘い断っておきながら、勝手な話なんだけど……ダメなら大丈夫です」 帰り道、恋人である智也にメールを送る 智也の勤める公立の中学校は、この葵高校と同じ町にある 葵高校から駅へ向かう途中、少し住宅街へ入ったところにあり、私は今まさにその前の道を通過しながら彼が居るであろう校舎を見上げながらメールを打った 時計を見るとちょうど昼休み…… ちゃんとお昼は食べたのかな? 智也は3年の担任をしていて、今の時期は進路相談などで忙しく、下手をしたら昼御飯を食べ損なってしまう事も最近よくある事らしい そんなんで最近は時間があれば週末に会うくらいで、平日はほぼ一人で過ごす事が多くなってしまった でも今日は私の再スタートの日だから、夕飯でも食べに行こうか、と智也が言ってくれたけど、忙しいのにわざわざ時間を作らせるのも悪いと思い断っていた 本当は今夜はゆっくり休んで明日からの準備をするつもりでいたのに、今は何故か無性に智也に会いたい 出来ることなら会って抱き締めて欲しい キスをして欲しい……それもいつもみたいに優しいキスじゃなく、何もかも忘れてしまうくらい激しいキスが欲しい 「ハァ……私、どうしちゃったのかな……?」 小さな溜め息をひとつ吐き出したところで手に持っていたスマホが振動した 画面を見ると智也からのメール すぐに見てみると「いまどこ?」と、たったこれだけ 「智也の学校を通過したとこ」 すぐに返信すると再びスマホが震えた でも、今度はメールではなく電話だ 「もしもし」 「駅前のコーヒーショップで待ってて! 10分くらいで行くから」 そう言うと電話は切れてしまった
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