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「もうここでいいよ、ここからは私一人で大丈夫だから……」
少し早めに智也の家を出て、2人で一緒に通勤する
同じ駅で降りて仲良く並んで道を歩く
時間が早いせいか、先生らしき人も生徒らしき人もまだいないようで、ひとまずホッとする
駅から10分くらい歩くと智也の勤めている中学の前に到着した
私の勤める高校はここから更に10分くらい歩いた所にある
「子供じゃないんだし、一人で平気だから……それに、やっぱり誰かに見られたらマズイよ……」
ちょっと拗ねたように最後の方は小声で言ってみたが
「ほら、行くぞ」
私の言葉は全然聞こえてません!って顔してサッサと先を歩いて行ってしまった
「もぅー!」
智也から2、3歩離れて俯きながら歩いていたら、ドンっと誰かにぶつかってしまった
顔をあげると目の前に少し怒った様な顔して智也が立ってる
「あ、ごめん……」
ぶつかった鼻をさすりながら謝ると、智也はブスーっとしたまま私の顔を覗き込んできた
「どうして離れて歩くの?菜乃花は俺が彼氏だって事、知られたら困る?」
私の目を見て真面目な顔して聞いてくる智也に
「違うよ、そうじゃなくて……
私達教師だし、もし生徒や保護者に見られたら何か言われそうじゃない
それに……やっぱり恥ずかしいよ
休みの日とかにバッタリどこかで会ってしまったんなら仕方ないけど、わざわざ一緒に出勤したとこを見られるのはどうなのかな~って……
だってほら朝から一緒だと、その……前の日泊まったの見え見えって感じがしてさ……なんか後から言われそうだし」
「却下!生徒はまだこの時間じゃ登校してこないし、保護者にもまず遭遇することないよ、それに菜乃花はまだ顔が知られてないから大丈夫……
会う可能性があるとするなら教員だな、でも俺としてはその方が好都合だからね」
「どうしてその方が好都合なの……?」
「そりゃあ菜乃花は俺のもんだってわからせるために決まってるだろ!!
なんか昨日の話聞いてたら、菜乃花の身の危険を感じたからね、菜乃花そういうの鈍いからさ、ちゃんと先手を打っておかないといけないなって……まぁ彼氏としては心配な訳」
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