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「神崎先生、ここの意味はこれでいいんですか?」 「あ、俺もわからないとこがありまーす」 「ちょっと~私が先でしょ!」 「ハイハイ、順番に見ますよ、まずは吉永さんどうぞ」 この学校に来てようやく1ヶ月が経った あれから何事もなく、順調に教師生活を送っている まぁ、高校生と言えば多感なお年頃だ みんな悩みのひとつやふたつは多かれ少なかれ持っているだろう 時には勉強以外の事で相談をされる事もある 彼等と比較的歳が近いせいなのか、恋の悩みを打ち明けられてアドバイスを求められる事もある 今日も放課後部室で……(あ、部活の顧問は写真部を引き受けました)1年の女子生徒から好きな子がいるけど、気持ちを打ち明けるのが怖いと相談を受けた 聞けばその彼は現在高3で彼女とは家が隣同士の幼馴染みさんらしい 彼は県外の大学を希望していて、受かったら地元を離れてしまうので、その前に自分の気持ちを伝えたい……でも彼にとって自分は『妹』の様な存在でしかでない もし自分の気持ちを伝えて、やっぱり断られてその後、気まずくなるよりもこのまま『妹』のポジションでいられる事を選ぶか…… 彼女なりになんとか答えを出そうとしてるけど、耐えられなくなって私に相談をしてきた (……なんか痛い程に彼女の気持ちがわかってしまう、私と一緒だよ……) 思わず抱きしめて『後悔したくないなら告白しない方がいいよ』って言ってあげたい……でも、彼女の想い人は夏兄とは違う、もしかしたらうまくいくかもしれない…… すがる様な目で私の言葉を待っている 彼女に私はどんな言葉をかけてあげたらいいのか考え込んでしまった   
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