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「美耶っ!」
後ろから達哉の呼ぶ声が聞こえたけれど、振り返らなかった。
ううん、振り返れなかったんだ。
こんなふうに達哉に会うと胸が痛くなる。
あの傷付いた過去を思い出して辛くなる。
いつまであたしの心に居座るの?
いつまであたしの心をかき乱すの?
もう嫌だよっ。
早くこの胸の痛みを消し去りたい。
鼻がツンとして目頭が熱くなって涙がこぼれた。
今はもう達哉のことが好きなわけじゃない。
ただ思い出して辛くなるだけ。
でも、
「好きなの?」
綺羅の目にはそんな風にはうつらない。
首を横に振るけれど、
「じゃあ何で泣いてんだよ? 好きだからじゃねぇの?」
「……違う」
ほんとに好きではない。
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