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「俺の手、振り払ったじゃん。見られたくなかったからじゃねぇの?」
「……」
見られたくなかったのは間違いない。
でもその理由は好きだからではない。
あたし、今の達哉が怖いんだ。
あの頃よりも真っ直ぐな視線。
真っ直ぐな想い。
真っ直ぐな言葉。
痛いくらいに伝わってくるから。
凄く怖いんだ。
でもやっぱりこの感情は“好き”ではない。
あたしは今間違いなく綺羅に恋しているんだから。
けれど、
「だから俺と付き合えねぇんだ?」
「『だから』って、何?」
綺羅にはそれが伝わらない。
「アイツのことが好きなんだろ?」
「違う、好きじゃない」
信じたのか信じなかったのかはわからない。
でもそのあと二人の間には沈黙しか流れなかった。
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