-西田の事情-

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飲み込んだはずの溜め息がやはり出てしまった。 梅雨入りが近いのか、重だるい空気がまとわりつく。 俺には夢がある。ロケンローな夢がある。 高校を卒業して、実家にいることもできたが、しかしそれではロケンローの名が廃る。 そこで俺は独身寮のあるこの会社を探し出し家を出た。 骨を埋める気はさらさらなかったが、社会に出て仕事をする以上、最低限のことは頑張ろうと心に決めていた。 しかし、出鼻は見事にくじかれた。生真面目なA型気質も足を引っ張るのかもしれない。 いい加減な大人たちに苛つきを覚えていた。 けれど、かく言う俺もここを選んだ理由は誉められたものではない。 警備といってもどこかに常駐するわけでもなく、巡回するでもない。 契約物件に設置したセンサーが異常を検知して初めて現場へ向かうことになる。 それもほとんどが誤報で、運が良ければ仮眠をしたまま朝を迎えることもあった。 空くであろう時間を夢のために使おうと考えていたんだ。 溜め息の理由がどこにあるのか、次第に自信を無くしていた。
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