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1 病室のシーン
大佐に案内されながら、病院の廊下のような場所を歩く佐神。前からやって来た男とすれ違い肩がぶつかる(わざと)。
情報部男「おっと、ごめんよ。……佐神君」
佐神は首を傾げる。男はそのまま去ってしまう。
大佐「どうした? 知り合いかね?」
佐神「さあ?」
大佐は一瞬、不満げな表情を見せるが、また歩き出す。
集中治療室のような場所に入る二人、医者らしき女性がいる。
医者「お待ちしていましたよ。藤原大佐、そして佐神君」
大佐「様子はどうかね?」
医者「報告するような事は何もありません」
大佐「それもそうだな……」
なぜかため息をつく二人。
佐神は、病室のガラスで区切られた向こう側を見る。そこにはベッドが置かれ、一人の少女が退屈そうな顔でルービックキューブを弄っている。
佐神「あの、俺が会うべき相手って彼女ですか?」
大佐「ん? 思い出せないかね?」
佐神「えっと、前にも説明とか受けましたっけ?」
大佐「……、彼女は御堂結絃。機巧のパイロットだ」
佐神「ああ、思い出した。確かようやく日本にも機巧が配備される事になったんでしたっけ? って事は、彼女がその? ……でも、なんで俺に?」
大佐「パイロットは神経接続で機巧を操るが、その仕組み上、動かすだけでも脳に損傷を受けて記憶が消える。それでも戦い続けた者の末路が……」
これは御堂の話のようにも聞こえるが、大佐の視線は佐神を向いてる。
大佐「記憶が消えるという事は、友達や……恋人もいないという事だ。いても忘れてしまうからな。そして彼女は既に記憶の九割を失っている」
佐神「もしかして、俺に友達役をやれって言ってます?」
大佐「いかんかね? 年も近いし」
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