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僕ウサ吉はまだ幼い頃に家族を無くした。
僕は両親の元、長男として生まれた。
とても可愛がられ大切に育てられた――両親の愛情を一身に受けて。
暫くすると僕に妹ができた。
すると両親は妹に掛かり切りになってしまい、次第に構ってくれなくなっていったんだ。
僕にはそれが除け者にされたみたいで日々悶々としていたと思う。
今となってはそれが当然だと理解できるけど、当時の僕には我慢ならなかったんだ。
ある日、僕は不貞腐れて独りで遊びに出た。
蝶を追い掛けたり、雲を眺めたり…。
時を忘れ遊び回っていた僕は、日が傾きだした頃に辺りが全く知らない場所だと自覚した――そう、所謂“迷子”になってしまっていた。
少しは動揺したけど取り乱したりはしなかった。僕には自慢の耳があったから。
誰かが捜してくれたら、その声を容易に聞き分け、帰る事ができる自信があったんだ。
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