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結果的に僕はその日、家に帰れなかった。
捜してはくれたのだろうが残念ながら僕の耳には届かなかった。
やがて日は落ち、森は闇に覆われてしまった。
夜に行動するのは危険が伴うというのは幼い僕でも理解していた。
辺りは見えないし、夜間行動する獰猛な敵もいると教えられていたから。
僕は適当なあなぐらで一夜を明かす事を余儀無くされた。
緊張と不安が相俟ってなかなか寝付けなかったものの、昼間の遊び疲れも手伝っていつしか深い眠りに落ちていた。
そんな僕を無理矢理に覚醒させたのは、けたたましい騒音だった。
騒音の正体はおそらく木が切り倒された音。
今になればそう察しがつくが、その時はそんな考えには至りもしなかった。
ただ凄い地響きと鳥達が一斉に飛び立つ音。
一拍置いてナカマ達の逃げ惑う喧騒。
平穏な日常が崩壊した瞬間だった。
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