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そのころ、一人家で飲んでいたリュウヤは、ぼんやりと考え事をしていた。
ーーーリュウヤ…。彼もまた、幼少期に父親から虐げられた被害者であった。強くて大柄な父親に嫌というほど殴られて育った。
訳もなく、理不尽に手を挙げる父親。酒臭い息を吐きかけられながら、黒く、ざらついたごつい腕がリュウヤの頭の上から何度も降ってきた。
逃げ場のない四畳半一間のボロアパート。父親は、隣近所にも聴こえる大きな声で喚き散らした。
もっと悲惨なのは、母親で、リュウヤは、いつか大きくなったら、必ず父親に復讐してやろうと心に決めていた。
母親を父親の支配から逃すため、自分を虐げた男を懲らしめるために。
リュウヤは、日増しに逞(たくま)しくなり、中学に入る頃には、腕っぷしも強くなっていた。
ボクシングを習い始めたのもこの頃。リュウヤは、才能を認められ、頭角をめきめきと表し始める。
父親が、母親に手を挙げるとリュウヤが完膚なきまで父親を叩きのめした。
とうとう、父親もリュウヤたちに手を出さなくなり、逃げるように家を後にした。
これで、家は救われた。リュウヤは、自分の手柄に酔いしれると共に母親が喜ぶことを期待していた。
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