クライアントNo.03 アネモネ

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 ーーー   ーーー    ーーー  クライアントの名前は、クルミ、25歳。  スレンダーなボディーと栗毛のショート。優しげな細い目が特徴の女性だ。  今時の若い子らしく、お洒落で、ネイルやそう高くはないもののアクセサリーを好んで身に付けている。  クルミは、20歳の時に、一度結婚。アルバイトしていた居酒屋で知り合った同い年の男であった。その場のノリでいわゆる『出来ちゃった結婚』。  しかし、旦那の暴力が原因で離婚。ナオという男の子、三歳の時に引き取って女手一つで育てている。  大型トラックの運転手。  クルミがナオを育てるために選んだ職業だ。明るく、好奇心旺盛で、面倒見のよい姉御肌。  元々、男っぽいと言われる性格のクルミ。あの大きな車体を針の穴をいとも簡単に通すように捌ききる姿に憧れて堪らない。  大型の免許を取得すると、すぐに配送の仕事へ飛び込んだ。  バイクや車の運転に快感を覚える。大きなトラックもすぐにコツを掴むと、クルミは、男勝りに器用に車を転がした。  汗臭い男社会。紅一点のクルミは、からかいの対象だ。  おじさんドライバーは、平気で猥談をクルミに振ってきた。普通の会社ならセクハラだと騒ぎたてるかもしれないが、ここは男社会の最たる所。  しかし、男は元々そういうものだし、騒げば余計面白がるもの。  それに、24で子持ちのバツイチ女。その手の話を知らぬものでもない。  クルミは、逆に笑顔でおじさんドライバーをいなして、やり込めていった。
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