『死』の価値。

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そこら辺りに転がる。単なるパチンコ玉だとでも言いたいのか。集まれば価値があるのに一個になればなんの価値もないパチンコ玉に? 「黙れ、黙れ、黙れ!! 私は強くなった。強くなったんだ。お前の命を盗るために全てを捨てたぞ」 もう、後戻りはできない。このまま帰れば警察がやってくる。殺しすぎた。人の命を盗りすぎた。そうなるまえにこの男を殺してしまいたい。 「私は、私はこんなにもお前を殺してやりたいって思ってるのに……」 殺せない。この男を殺せない。全身が火照って苦しい。心臓の音がバクバクとうるさい。 「そうか。ならば俺もその気持ちに答えよう」 つかつかと男が近寄ってくる。ナイフを構えるが動けない。近寄るなと言いたくなる。 「もっと強くなれ。俺を殺せる覚悟をもってこい」 と言うと男は私の唇を奪った。思考が止まる。スパークする。ナイフがカランッと落ちた。 「じゃあな。小娘、俺を殺したければもっと憎め、恨め、殺意を尖らせろ。その程度では俺は殺せない」 価値を磨けとだけ、男は言うと立ち去った。 「……ぁあ、そうか。そうなんだ」 ナイフを取る。 「私は、あの男を、殺したいくらいに愛してるんだ」 全身がぼうっと熱くなる。初めて自分の中身が見抜かれた時からきっと、きっとあの男に、 「殺してやる。必ず、この手で殺してやる」
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