『死』の価値。

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いや、違う、きっと違う、あの男は私を犯人にするつもりなんだ。そりゃそうだ。家族全員、死んでるのに私だけ生き残るなんておかしい。だから、 「こ、殺さないの?」 殺されたくないのに、殺されないかもしれないのにそんなことを聞いてしまっていた。バカじゃないかと思う。このまま黙ってれば殺されないんだからさっさとお帰り願おうじゃないか。家族の死よりも自分の保身に走る身勝手さに辟易したけれど、これが正しいのだと信じた。このまま生きてるより死んだほうが、いや、やっぱり死にたくねー。 パニックに囚われた脳みそがいい感じにパンクしそうになる。涙はボロボロ、下腹部もいっしょに液体噴射しそう、この年になってお漏らしとか嫌だなぁとか、思い出した私に向かって、男は答える。 「お前には殺す価値なんてない、せいぜい惨めに生き残れ」 「……………………………………」 んだそりゃあ、テメー何様じゃあ、自首しろこらとか言う暇もなく扉が閉まる。残されたのは家族の死体と私だ。 悪党が殺されるよりも、幼女が殺されるほうが罪は重く批判も大きい、だったらこれはどうするべきなんだ? 家族が殺されてた。そこそこ善人な彼らがだ、幼くもなければ、悪党というわけでもない彼らがだ。敵討ち? ハッハー、無理だっちゅーに、どころか私が犯人にされそうじゃん。 どうするべきなんだ? 答えはすぐに出てきた、私は部屋中に液体を撒き散らしていた。考える余裕はなく一心不乱に液体をまく、まく、まく、家族の血や肉を踏み潰し、蹴飛ばし、駆け抜ける。 そして、「あは、アハハハハ、アハアハ、アハハハ」 つーんと鼻につく刺激臭に脳みそがクラクラした、涙はとっくの昔に枯れてしまって、震える手で箱の側面を棒で擦る、上手くつかねー、ちくしょ、ちくしょ、ちくしょ、ボキッと折れてもう一本、何度かそんなことを繰り返しやっとジュボと火がついた。 「ハッピーバースデーっなんつって、誕生日なんかじゃねーっつーの」 ポロリと指に摘まんだマッチが落ちる。部屋中に撒き散らしたガソリンに引火する。おお、燃えとる、燃えとると同時に私の身体にも火が引火しーーーー熱さと痛みに意識が吹っ飛んだ。 上手くやれるそう確信できていた。子供の頃から人の視線に敏感で、死角というやつもよくわかった。だから欲しいものをこっそり盗むことも容易だった。その隠し場所も、
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