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こき下ろそうとする輩も出てくる。うんざりした気持ちになりながらそれは違うと、誤解なのだと言うが当分は、この噂の質問をされるだろうと覚悟はしていた。
援交だなんて一度もしたことがないんだから、ボロが出るということもない、はずだ。
その帰り道、さすがに疲れてトボトボと帰っていた。今日はさすがに寄り道はできずこのまままっすぐ家に帰る、その途中、一件のパチンコ屋に目がついた。別にパチンコがしたいわけじゃない、お金を使うような遊びにはスリルがあるだろうが、失う物がお金だと思うとやりたくないし、私は未成年者だ。入店すらできないのにどうやってパチンコするんだと思う。
やっぱりスリルは他人の物を盗むほうが楽しい。
あんなことがあっても私の悪い部分は直ってなんていなかった。まぁ、そう簡単に治るわけなんてないんだけれど、どうしてパチンコ屋の目の前で足を止めたのかを漠然と考えると、昨日のあの陰気な男の言葉が思い出せる。
価値。
つまりは、お金だ。お金=価値というのが私の理屈で、無価値と呼ばれる奴らはきっとこんな場所に通いつめる奴らのことだと思った。
金ばかりを浪費して、叶いもしない夢にうつつを抜かす連中なんて無価値だろう。悪銭身に付かずなんてよく言ったものだ。
何かが予感がしていたわけじゃない、私はそういったオカルトやホラーといったたぐいを信じていないから、でも、背筋が凍るような感覚があっても気のせいだと切り捨てた。
仮に切り捨てたとしても、その末路はきっと回避できはしなかっただろうけれど……
あの事件から数ヶ月後、私はグルグルの包帯まみれのまま病院にいた。長そうで短い回想が終わり。私は自分の価値をすべて失っていた。焼身自殺というのは苦しいだけで死ぬことは難しいらしい。
別に死ぬつもりはなかったけれど、もう全てがどうでもよくなったという感じでガソリン、ぶちまけて火をつけたのは家族が殺されたという事実から目を伏せたかったというだけなこかもしれない。なんとなくだけれど、心中にみたいなものだろう。そして、私だけが生き残った。
ただし、すべての価値を失った。
女としての価値。学校での価値。将来への価値。火傷の跡は消えない。医療技術でどうにかなるかもしれないけれど、自分の顔をいじくりまわすのは正直、嫌だった。自分が自分でなくなるのが嫌だった。
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