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胸が焼けるように痛くて、
私は、デスクに戻ると、
スマホを持った。
それ、本当なの……?
メールを書く手が震えてしまう。
『昨日の夜、飲み会の後、まっすぐ家に帰った?』
送ったメールの返信は早かった。
『ちゃんと帰ったよ。
それより、今夜、そっち泊まっていい?』
それよりって何?
昨日の夜の話は、これで、終わり?
『田口さんとホテルに入ったって本当?』
とか。
『田口さんと寝たの?』
とか。
聞きたいのに
そんなこと、怖くて聞けない……。
その夜、私の部屋に来た巧さんは、
いつもの巧さんだった。
問い詰めなきゃって思うのに、
どうしても言い出せないまま。
優しい言葉も、抱きしめる腕も、
ちょっと意地悪な唇も……。
いつもと変わらない。
やっぱり噂はウソだよね……。
そう思おうとしていた私の心は、
一瞬にして冷めた。
巧さんの背中に、爪の跡がある!
まだ新しい赤い線。
気づいてないの……?
これって、やっぱり、
そういうことなんだよね。
いつもの行為に、
体は翻弄されていくけど、
心にしこりが残ったまま、
全然溶けていかない。
昨日の夜、田口さんと寝たんだよね。
まっすぐ帰ったなんて、
ウソなんだ。
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