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終わった後、私の横で 罪のない顔をして 寝息をたてている巧さん。 だけど、私は寝付けなくて……。 時計を見ると、もうすぐ午前3時。 暗闇に包まれている部屋で、 私はテレビをつけた。  一昔前に流行ったハリウッド映画が放送されている。 私は、イヤホンで大音量の音楽を聞きながら、 リモコンを手に持った。 「少しくらい不幸になればいい」 4色ボタンを同時に押す。 瞬時に画面に砂嵐が現れた。 砂嵐は、本当だったんだ……。 少し驚いたけど、 躊躇せず、テレビのボリュームを上げていく。 私の耳には、テレビの音は、聞こえない。 巧さんは、熟睡していて、 起きる気配は、なかった。 『少しくらい不幸になればいい』 私の中の悪魔がもう一度囁いた。 テレビの砂嵐をぼーっと眺めながら、 どれくらい時間が経っただろう……。 ハッ! 突然、背中に人肌を感じて、振り返ると、 うっすらと目を開けた巧さんが、私の肩に触れて、 何かを喋っている。 慌てて、テレビを消し、 こっそりイヤホンを外した。 「どうしたんだよ……」 かすれた声で、私の肩を引き寄せる。 「ごめん、起こしちゃって。 ちょっと寝付けなくて……」 私、今、 一体、何をやってた? あんな都市伝説なんて、 信じていなかったはずなのに。 自分がこんなに陰険だったなんて 思わなかった。 どうかしてた……。 まだ、寝ぼけた様子の巧さんの横に体を滑り込んで、 体を密着させた。 明日、ちゃんと真実を聞いてみよう。 考えるのは、それからにしよう……。
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