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 次の日は、二人とも休日で、 巧さんが、連れて行ってくれたのは、 予約を取るのも難しいほど 人気のフレンチレストラン。 私が、前から行ってみたいって言ってたところだ。 「どうしたの? こんなところ、よく予約取れたね……」 「まぁな……」 向かい合って座っている巧さんは 少し恥ずかしそうに微笑んだ。 「あのな……。 俺ら付き合って、もうすぐ1年じゃん。 そろそろ、ちゃんとしたいなと思って」 そう言いながら、巧さんは ポケットから小さな箱を取り出した。 「亜矢。結婚しよう」 「うそっ……」 嬉しくないわけじゃ、ない。 だけど、あの噂は、 昨日聞いたばかり……。 あれが、本当だとしたら、 私は…… 受け入れることができるの? 「一つだけ、聞いていい……?」 「どうぞ。なんでも」  私が断らないことが分かってるかのような満面の笑顔。 「田口優奈と、寝た……?」 「……は……?」 巧さんは私の言葉を一瞬理解できなかったようで、 少し間をおいてから眉間にしわを寄せた。 「美嘉がね、 この間、巧さんと田口さんが ホテルに入っていくところを見たって……」 「何それ。こないだっていつだよ? 俺、田口さんとは、全然……。 あぁ。もしかして……。 こないだの飲み会で フラフラになるまで飲んでた田口さんを 課の男が狙ってたから、 何かあってもいけないし、 俺が介抱したけど……。」 「それって……。オーセラホテル?」 「そう、そのホテルだった。 何かあるとか、ありえねーよ。 俺は、フェロモン出しまくりの女より…… ずっと、 亜矢の方が……」 普段、甘いセリフなんて口にしない巧さんの顔が 赤くなっていく。
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