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帰りの道。 私たちは、巧さんの部屋に向かった。 部屋の入口の前で、 巧さんが立ち止まって言った。 「あ、今、飲み物切らしてんだ。 ちょっとそこのコンビニまで走ってくるから、 先に入ってろよ」 「うん」 私は合鍵を使って、部屋に入って、 ソファーに腰を下ろして一息ついた。 そうだ。指輪……。 カバンの中から、 さっきもらった小さな箱を取り出した。 見るだけでうっとりしてしまうほど、 キラキラと光り輝くダイヤの指輪を そっと左薬指にはめた。 その時、 キキーーっと車のブレーキ音の後、 ドン、ズシンという鈍い音。 ここから、すぐ近くだ。 もし、、かして……? 巧さん……? すごくイヤな予感がして、 頭からサーっと血の気が引いていく。 昨日の夜、私は…… 『少しくらい不幸になればいい』 なんて思って……。 巧さんは、あの時、 砂嵐の中の機械音を聞いてしまったんじゃ? 瞬時に駆け出した。 巧さん。 巧さん。 無事でいて……。
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