お世話になりました 橙

7/10
前へ
/27ページ
次へ
________.赤 あいつが、そんな嘘つける訳なかった。 嫌い、という言葉を発する時、声が明らかに震えていた。 「あんな嘘、つかないで下さいよ・・・」 なにか、事情を知っていそうなマネージャーが、ぼそりと発した一言がなにか引っかかる。 「それ、どういうこと?」 「あ、え・・・」 分かり易く動揺しているマネージャーに、早く、と答えを急かす。 「渋沢さんだけですからね?他のメンバーに言わないで下さいよ? ・・・丸の内さん、脳に悪性の腫瘍があるんです。もう、1ヶ月生きられるか・・・」 「なんでそんなこと!」 「私の、推測ですけど。自分の事引き摺られるの嫌なんだと思います。皆さんの足枷になると、思ったんじゃないですか?」 このマネージャーの言った通り、足枷になるのを嫌っていたら。 そう思うと、足は外に向かって駆け出していた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加