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________.赤
あいつが、そんな嘘つける訳なかった。
嫌い、という言葉を発する時、声が明らかに震えていた。
「あんな嘘、つかないで下さいよ・・・」
なにか、事情を知っていそうなマネージャーが、ぼそりと発した一言がなにか引っかかる。
「それ、どういうこと?」
「あ、え・・・」
分かり易く動揺しているマネージャーに、早く、と答えを急かす。
「渋沢さんだけですからね?他のメンバーに言わないで下さいよ?
・・・丸の内さん、脳に悪性の腫瘍があるんです。もう、1ヶ月生きられるか・・・」
「なんでそんなこと!」
「私の、推測ですけど。自分の事引き摺られるの嫌なんだと思います。皆さんの足枷になると、思ったんじゃないですか?」
このマネージャーの言った通り、足枷になるのを嫌っていたら。
そう思うと、足は外に向かって駆け出していた。
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