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回避しながら周囲に視線を巡らせる───襲撃者の姿は、ない
(──へぇ)
一歩、二歩と飛んだ先で嗤う。いつも後ろで括っている髪がほどけていたからだ
周囲の殺気のみに気をかけていたとはいえ、当然油断をしていたつもりはない。
つまり、今回の襲撃者はそれなりの隠密能力を持っている
(だが──)
思考を打ち切ると壬生狼を再び投げ捨てて右手を振りかぶると正面の家屋の壁へと跳ぶ
─ゴシャッ!
「────ッ!?」
「姿と気配がない。ただ、それだけだ」
背後から音もなく忍び寄ってきた何かを掴んで叩きつける
男だ。青みがかった紫色の胴衣に深紅のマフラーをしている
「いい腕だ…奴等の仲間にしておくには惜しいほど」
「…っ!クソっ!」
「─────ちっ」
首をへし折ろうと握る手に力を込めようとして止める
「貴様、名は?」
「────殺せ」
「くくっ」
首を押さえられながらも未だ喰い殺さんと言わんばかりの闘志を宿した瞳に喉を鳴らし、ゆっくりと手を離す
「なんの真似だ…!」
「生け捕り」
おもむろにベルトを引き抜き、手早く後ろ手に拘束して膝を折らせる
「依頼達成ってか」
遥か向こうから息を切らせて駆けてくる2つの影を見ながらタバコに火を点けた
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